KARACRIXでは、監視、計測、制御の対象を総称して オブジェクトと呼んでいます。実際に監視、計測、制御の対象になるものには、様々な仕様のセンサ、アクチュエータが接続されることになり
ますが、これらの対象物からの入出力データの性質をグループ化し抽象化して扱うようにしていま
す。オブジェクトとしてシステム上で記号化して扱えるため各種設定やプログラミングでの記述が
シンプルになります。
KARACRIXでは、オブジェクトのデータベースを予め用意しています。このオブジェクトデータ
ベースをご自分のシステムに合わせて編集することで各種システムを構築することができます。
KARACRIXでは以下のオブジェクトタイプのデータベースが標準で定義されています。
バイナリオブジェクト アナログオブジェクト
@BIオブジェクト 12点 BAI.fオブジェクト 12点
ABOオブジェクト 5点
イメージオブジェクト
CIMGオブジェクト 1点
バイナリオブジェクト アナログオブジェクト
@BIオブジェクト 80点 BAI.iオブジェクト 40点
ABOオブジェクト 38点 CAI.fオブジェクト 40点
イメージオブジェクト
DIMGオブジェクト 2点
バイナリオブジェクト アナログオブジェクト
@BIオブジェクト 100点 BAI.iオブジェクト 100点
ABOオブジェクト 96点 CAI.fオブジェクト 100点
イメージオブジェクト
DIMGオブジェクト 4点
バイナリオブジェクト アナログオブジェクト
@BIオブジェクト 40点 BAI.iオブジェクト 19点
ABOオブジェクト 20点 CAI.fオブジェクト 19点
イメージオブジェクト
DIMGオブジェクト 2点
(1) BIおよびBOオブジェクト
BIとは(Binary Input)の略で、「2値(1、0値)入力」という意味です。つまりBIオブジェ クトとは2つの状態を取りうるオブジェクトのことです。例えば「ON・OFF」という2つの状態を 持つ照明器具の点滅状態などを取得するセンサなどに使用します。
BOとは(Binary Output)の略で、「2値(1、0値)出力」という意味です。照明器具に電圧を 供給するパワーリレーなどのON/OFFに使用します。
(2) AI.iおよびAI.fオブジェクト
AIとは(Analog Input)の略で、「アナログ(数値)の入力」という意味です。各種アナログセ ンサからの入力などに使用します。AIオブジェクトには、 AI.i(integer型)とAI.f(float型)の2タイプを使用することができます。
アナログ量を扱う場合に、必要な精度によって使い分けることができます。
また、AI.iオブジェクトでは、カウンタなどの計数型のデータを扱う場合にも適用することが できます。
(3) IMGオブジェクト
IMGオブジェクトとは、動画イメージを扱うオブジェクトです。CCDカメラなどからのビデオ信
号をビデオキャプチャボードで取り込み、デジタルデータ化したものを対象とします。この機能を
活用するには、OSのビデオキャプチャボード用デバイスドライバが有効になっている必要があり
ます。
センサから取り込まれた情報や、アクチュエータに出力するデータはシステム上では、各種タイ
プのオブジェクト用のメモリを経由して入出力されます。例えば、AI.f型のオブジェクト“aif01”
に温度センサからの計測値を通信ドライバがマッピングしているとした場合、システム上では、オ
ブジェクト“aif01”を参照すれば温度センサの値が1対1で取得できることになります。次に、
温度センサの値の最大値を取得したい場合があります。この場合には、“aif01”の値をプログラム
で取得して時間軸に沿って比較する処理を行う必要があります。この比較処理プログラムの結果を
オブジェクトとして扱うことができます。ここで“aif02”を“最大温度”などのオブジェクトと
して使用することにしてプログラムから最大温度を“aif02”に書き込む処理をおこなえば、シス
テム上で、“aif02”を参照することにより最大温度を取得することができます。
このようなデータハンドリング用のオブジェクトの使用方法を 擬似オブジェクトと呼んでいます。
図17-1 オブジェクトの概念
制御プログラムは、ctlprgオブジェクトとして定義されます。
印刷プログラムは、priprgオブジェクトとして定義されています。
これらも、オブジェクトとして制御対象になりますが、直接外部機器と対応づけされていません ので「オブジェクト登録」画面では、設定対象になっていません。
ctlprgオブジェクトについては、「9章 制御プログラム」を参照して下さい。
priprgオブジェクトについては、「10章 印刷プログラム」を参照して下さい。
図17-2 システム環境メニュー画面(KaracrixBuilderPro-500Rの場合)
ここで、“オブジェクト”ボタンを押すと「オブジェクト登録」画面が表示されます。
図17-3 オブジェクト登録画面
図17-4 オブジェクト登録画面
(1)オブジェクト名称の設定
オブジェクトに名前を付けることができます。“オブジェクト名”欄に実際のセンサやアクチュ エータの性質に合ったユーザーの識別しやすい名称を登録します。例えば電灯のスイッチなどは、 “電灯スイッチ”のように設定します。
図17-5 オブジェクト名称の設定
(2)バイナリフォーマットの設定
バイナリオブジェクト(BI、BO)のフォーマット(ON/OFFなどの表示上の表現)を設定します。オ ブジェクトの状態が変化したときに、ここで選択したフォーマットで監視パネル等に表示されます。
“フォーマット”欄を選択するとフォーマットの「選択」ダイアログが表示されます。この中か ら使用目的にあったものを選択してください。もし、この中に用途にマッチするものがない場合は、 表現文字列を追加することができます。「付録D バイナリフォーマットの追加」を参照して下さい。
図17-6 バイナリフォーマットの設定
オブジェクトに名前を付けます。バイナリオブジェクトと同様に、“オブジェクト名”欄に実際 のセンサなどのアナログデバイスの性質に合った識別しやすい名称を登録します。例えば温室の室 温などは、“温室内温度”のように設定します。または、そのものずばり“温度センサ1”などと しても結構です。
図17-7 アナログオブジェクト名称の登録
(2)アナログフォーマット定義
アナログデータには整数型(AI.i)と実数型(AI.f)の2種類があります。そして、計測値とし て有効数字が何桁必要であるかもオブジェクトによって異なります。これらの型を次のように定義 する必要があります。
%Nd 表示桁数Nの整数値
%N.nf 表示桁数N、小数部n桁の実数値
これはC言語のprintf文などで使用するデータ型表示フォーマットの記述の方法と同じになっ ています(詳しくはC言語の資料などを参照してください)。例えば、表示桁数6、小数部1桁の実 数型は、
%6.1f
となります。
“フォーマット”欄を選択すると、図17-8のようにフォーマットの「選択」ダイアログ表示され ます。ここでフォーマットを選択して登録します。
図17-8 アナログフォーマットの登録
(3)アナログ単位の設定
アナログのデータの単位を設定します。
“単位”欄を選択すると、単位の「選択」ダイアログが表示されます。この中から単位を選択し ます。もし、この中に必要とするものがない場合は、単位の文字列を追加することができます。「付 録C アナログ単位の追加」を参照して下さい。
図17-9 アナログ単位の設定
(4)アナログの上下限値の設定
アナログデバイスの取る上限値、下限値を入力します。ここで入力する値は、通信プログラムで 取得データをアナログオブジェクトにマッピングするときのデータのレンジに依存しています。
仮に温度センサの特性として0〜100℃が0〜1Vとして計測装置に入力され、AD変換後に通信 プログラムに0〜1000の変換値として取得されているとします。通信プログラムでこの値をアナ ログオブジェクトにそのままマッピングするのであれば、上下限値は、0〜1000に設定する必要が あります。
また、通信プログラムで0.1倍する処理をしてからアナログオブジェクトにマッピングしている のであれば、上下限値は、0〜100に設定する必要があるわけです。
このように、ここでの設定は、計測装置用通信プログラムのデータ処理と密接に関係しています ので、弊社のHPのダウンロードページから取得できる計測装置用通信プログラム例を参考にして理解を深めることをお勧め します。
“上限値”欄を選択すると数値入力ウィンドウが表示されますので上限値を登録します。同様に 下限値も設定します。
図17-10 アナログ上下限値の設定
オブジェクトに名前を付けます。イメージオブジェクトはimg01などのIDが割り付けら れています。“オブジェクト名”欄に識別しやすい名称を登録します。例えば、“監視カメラ1”の ように設定します。
図17-11 イメージオブジェクト名称の登録
(2)キャプチャカード使用チャンネル設定
ビデオキャプチャカードの入力端子が複数系統存在する場合に、使用する端子をCHとして選択 することができます。
図17-12 チャンネルの選択
(3)イメージ取り込みサイズの設定
イメージの取り込みサイズをwidth×heightで設定します。この値は、キャプチャカードの仕 様に依存していますが、現在入手できるbt848系のキャプチャカードでは、640×480、320×240、 160×120などが選択できます。デフォルトでは、640×480になっています。
図17-13 イメージ取り込みサイズの設定
(4)イメージブライトネス設定(画像の明るさ)
ビデオキャプチャカードから取り込む画像の明るさを調整します。標準の設定では、“100”のデ フォルト(中心値)です。
図17-14 イメージの明るさの設定
(5)イメージコントラスト設定(画像のコントラスト)
ビデオキャプチャカードから取り込む画像のコントラストを調整します。標準の設定では、“100” のデフォルト(中心値)です。
図17-15 イメージのコントラストの設定
図17-16 system環境設定メニューの終了
図17-17 RSTまたはSYSENDボタンでシステムを終了
通信プログラムは、ご利用の計測制御装置ごとに用意する必要がありますが、作成方法は弊社の 提供する標準トレーニングボード「KCXH-IOB10A」用のサンプル通信プログラムが標準で登録され ていますので、これを参考にして下さい。ここでは、「KCXH-IOB10A」用のサンプル通信プログラム を使用して説明します。
「メインメニュー」画面から、“制御プログラム”ボタンを押して「制御プログラム登録」画面を 表示して下さい。No,10の行に“計測制御通信プログラム(KCXH-IOB10A)”とプログラム名が登録 されています。ここで、プログラムがコンパイル済みの状態であれば、“実行”欄を選択すること により実行の「確認」ダイアログが表示されますので、“YES”ボタンを選択して“RUN”と表示さ れるのを確認して下さい。
図17-18 制御プログラム登録画面
図17-19 制御プログラムの実行状態
図17-19のように表示さていれば、通信プログラムは正しく実行されています。
以上で、センサやアクチュエータをオブジェクトとして監視、操作する準備ができました。